ホルケウ~暗く甘い秘密~


この、こそばゆい感覚をどうすれば良いのか。
玲はいつまで、こうしている気なのか。

ただオロオロしているしかないりこは、自分がひどく女性らしいなよやかな表情をしていることに、気づいていなかった。


「赤くなっちゃってかわいい。でも、もうちょい男に警戒心持ったほうが良いよ?」


悪戯っぽい笑顔なんかではない。
大人の、“男”を感じさせる艶やかな微笑を浮かべ、玲の人差し指は、そっとりこの唇に触れた。

りこの目を真っ直ぐ見つめる視線には、熱と言い知れぬ何かがこもっている。

唇をなぞるだけの仕草。
それだけで、りこは自分の立場を本能的に理解した。

自分は補食される側なのだ――――――――――


「いきなりごめん。じゃ、俺帰るわ。また後で回覧板届けに来るね」


先程までの色気が嘘のように、一瞬にして玲はもとに戻った。

りこのほうはというと、まだ思考が切り替えられずにいる。


「りこさん、あんまりボーッとしていたら襲われるよ。ほんとに気をつけな」


からかうような笑顔で、サラッと爆弾発言を落とし、玲は帰宅した。

その背中を見送り、しばらく経ってから、りこの理性は復旧した。

一体最後のあれはどういう意味だったのか。
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