ホルケウ~暗く甘い秘密~
自己嫌悪と後悔だけが心の中で渦を巻き、午前中の授業はまったく頭に入らなかった。
珍しくボーッとしているりこの異変に、最近いつも行動を共にしている上原は気づいた。
「春山、今日おかしくない?なした?」
ポテトチップスを片手に覗きこむ上原に、りこは苦笑しながら答えた。
「ちょっと彼氏とケンカしたっていうか、なんていうか……」
歯切れの悪い答えに、上原は眉を吊り上げた。
りこらしからぬ、誤魔化すような答えだ。
相模もまたりこの異変に気づいていたらしく、上原のポテトチップスをさりげなく奪って食べながら、横から口を挟んだ。
「具体的な説明プリーズ」
「ああ、うん。さっくり言ったら、彼が気にしていることを突いて傷つけちゃった、みたいな……」
「反応は?」
「自虐に走ってたけど、目は笑ってなかった」
(ってちょっと。なんで私相模くんに玲のことなんか相談してるの!?)
あまりにもナチュラルに話に入ってきたため、違和感を抱かなかった。
上原もいつの間にか奪われていたポテトチップスを取り戻し、相模の額に無言でデコピンを食らわせる。
「いって!」
「無言で入ってくるな。そして勝手に食うな」
「あの流れぶったぎって入れと!?やだよ。あとそのポテチまずい」
「勝手に食っといて文句まで言うか!」
どこまでもマイペースな相模は、怒れる上原を放置し、神妙な顔でりこに向き合った。
「例えると、春山は彼氏が包茎短小チンという悩みを抱えていることを知りながら、このミニチン野郎!とか言って傷つけてしまったみたいな、そんな感じ?」
あまりにも具体的な男性事情を引き合いに出されて、さすがにりこは言葉に詰まった。
出来れば他の例えが欲しいところであった。
「まあ、悩みの内容は違うけどそんな感じかな……」
「あー」
途端に相模の表情が変わる。
憐れむような眼差しと同情に浸った声が、りこの罪悪感をこれでもかというほど刺激した。
「男って女の子よりハートが弱いんだよ。女の子でもコンプレックスをつつかれるのは嫌だろうけど。でもって、自虐に走るのはヤバい。自信がなくなると色々とダメになる。ここは春山が癒してあげないとな」