ホルケウ~暗く甘い秘密~
「春山、重くない?」
「へーきへーき。それより、もう1つこっちにちょうだい。次に行く手芸店のが絶対荷物重いよ。上原くんには、そっちを持ってもらわないと」
放課後、りこと上原は学園祭の準備のため、買い出しに出ていた。
意外と力仕事に強いりこに、上原は残念そうに唇をすぼめた。
「俺することねーじゃん」
「後から出てくるわよ。それより、そろそろお店に着くよ。買い出しのメモ出して」
今日の買い出しは、男装女装コンテストの衣装である。
メモを見るなり、上原は嫌そうに顔をしかめ小さく舌打ちした。
「なんで俺が女装コンテストに……」
「仕方ないじゃない。くじで当たったんだから」
にべもないりこの返しに、上原はより一層凹んだ。
慰めてほしいとまでは言わないが、せめてもう少しリアクションが欲しいところであった。
くじ引きの結果、男装コンテストには星屋、女装コンテストには上原が出場することになり、それが決まった6限のホームルームから、上原は不機嫌である。
「しかも相方は星屋かよ。俺、あの子苦手」
「あー、うん。一緒にいて楽しいタイプではないね」
だいぶ控え目に形容したが、りこは上履きにセミを突っ込まれていたことや、足を引っかけられたことを忘れてはいなかった。
上原が苦手意識を持つのも、十二分に理解出来る。
「でもって、お題のこれなに!?彼氏彼女の初デートって!」
頭を抱え叫ぶ上原に、りこは冷静にツッコむ。
「そのままの意味じゃない?っていうか、S嬢と下僕とか、わけのわからないものが当たらなくて良かったじゃん」
当たってしまった隣のクラスが、どう仕上げてくるのか見物だ。