ホルケウ~暗く甘い秘密~


翌日、前日に玲の問題発言のせいであまり寝つけなかったりこは、予定よりも30分早く学校へ行った。


(まだ中学生のくせに、マセガキにも程があるわ!襲われないように、って意味わからないんだけど!)


昨日の数ある爆弾発言の中でも最も気になったのはそこである。

恋愛経験ゼロのりこからしたら、頭がパージしそうなほどドキドキしたのだ。

その後、回覧板を届けに来た玲とLINEのIDを交換し、夜遅くまで話した。

話題は主に、りこの転校後である。

結果いつもよりも一時間寝るのが遅くなってしまったが、なぜか早起きしてしまった。


(せっかく早起きしたんだから、そのぶんの時間は有効活用しないとね)


玲と話すのに夢中で、日課だった受験勉強の時間が削れてしまったが、それを今日のうちに取り戻せそうである。

軽快な足取りで玄関に入るが、まだほとんど人はいない。

真っ直ぐ教室に向かうのがなんとなく嫌だったため、りこは常に開放されている図書室へ向かった。

蔵書の量がなかなかあり、図書室内のパソコンが常に使えるので、りこはここの常連になる予定だった。

しかし、予定はあくまで予定。

図書室のある三階まで登って、りこは考えを改める必要性があると知った。


「んッ……あッあ……」


図書室のドアに手をかけた瞬間、情事を思わせる声がりこの耳に入った。
続いて、静かな室内に響くクチャクチャという卑猥な音。
その音は一定のリズムを刻んでいる。

「やッ……あ……」

音の間隔が短くなっていくのと同時に、喘ぎ声は鋭い叫びと化していった。

いまや、肉がぶつかり合うパンッパンッという音は廊下まで響いている。


(ここから離れなきゃ)


グルグル渦巻く思考回路が出した唯一の答えに従って、りこはダッシュで図書室を離れた。

教室に飛び込む前に、女子トイレで動揺が顔に出ていないか確かめる。

鏡を凝視するまでもなく、りこは視界の端に自分の真っ赤な顔をとらえた。

りこの性的なものに対する知識など、精々少女マンガで読んだくらいのものだ。

エロ動画のような、直接的で生々しいものにはまったく免疫がない。

顔の赤みが引くまで待とう。

顔を洗おうと水道の蛇口を捻ったりこだが、廊下に響く足音に、その手を止めた。

足音は、どんどん近づいてくる。


(この顔は見られたくない!)


慌てて真後ろの個室に飛び込み、鍵をかけると同時に、足音の主は女子トイレのドアを開けた。


< 16 / 191 >

この作品をシェア

pagetop