ホルケウ~暗く甘い秘密~
頑なに拒否し続ける俺を、怪訝な表情で愛子はのぞきこむ。
顔を背ければ、二人の間にまた気まずい沈黙が流れた。
「玲、あたしになんか隠してない?」
ああ、とうとう終わりの日が来た。
「別に」
力無くそう嘯くと、愛子は納得いかないって顔をした。
「嘘だよ。なんか隠してるもん。それも、ずっと前から」
「なんも隠してないって」
せっかくのクリスマスに、それも家デートの最中に、俺は一体何をやっているんだろう。
別に愛子が悪いわけでもないのに、俺は徐々に彼女に対する気持ちが冷めていくのを感じ取った。
別れようか迷っていた気持ちが、いつの間にか別れたいに傾いていた。
あれほど好きだったのに。
「ねえ、何を隠しているのかは知らないけど、あたしなら大丈夫だよ。お母さんにつけられた傷だって、あたしなら癒せる」
やめろ。
俺の苦しみをそんな軽々しく扱うな。
黙って愛子から視線を外せば、むきになった彼女は俺に掴みかかってきた。
「お願いだから認めて!あたしは玲のお母さんじゃない!なにがあっても、玲のことを受け止められる」
ギリギリまで張りつめていた理性という名の糸が、プツンと音をたて、切れた。
もう、我慢するのがバカらしくなった。
「じゃあ、受け止めてみせろ」
挑発するように鼻で笑って、俺は愛子の腕を引っ張って、二階の自室に連れ込んだ。
ベッドに放り込まれて、これから何をするのか察した愛子は、いきなり怯えはじめた。
セーターとシャツを脱いで、俺は冷ややかな目で愛子を見下ろした。
「なに、怖いの?」
自分から煽ってきたくせに。
言外にそう匂わせれば、愛子はほとんど条件反射で怖くないって言い返してきた。
小刻みに足が震えているのに、強がってそんなことを言って。
普通なら、そんな姿に愛しさを感じたりするんだろうけど、俺はというとこの時点で相当冷めていた。
自分の感情を閉じ込めるだけで手一杯だったから。
箍が外れてしまうと、体は本能に正直になる。
愛子の甘い匂いの肢体を組み敷き、首筋に軽く噛みついた。
初めてしたディープキスは、わりと上手く出来たと思う。
そのあとも特に詰まることなく進められたのは、多分アンパルのおかげだ。
犬歯から抽出される媚薬効果のある体液は、あっという間に愛子の体を蝕んでいった。