ホルケウ~暗く甘い秘密~
冬が近づくにつれ、白川町の鬱蒼とした森は、より寒々しさを増していった。
森の外れ、狼の群れが住んでいる地域―――別名、人狼の居住地―――にて、その一帯を治める年若き長、シフラは即席の壇上にいた。
「人狼の個体数が減っている」
つまらなそうな表情で、シフラは言った。
どう反応したものかと、人狼たちは息を潜めてシフラの言葉を待つ。
このように息が詰まりそうな時、最近まではシフラの傍らにいた右腕の少年が上手くあしらってくれていた。
しかしその少年、ヒカルは先月森を出ていったきり戻ってこない。
「たった3ヶ月で、6匹も人間に狩られた。しかも、そのうち1匹は純血種だ」
人狼たちは、その純血種はヒカルであることに気がついた。
シフラがヒカルの死を認めた。
そのことに、かすかにどよめきが走る。
人狼たちの囁きを無視して、シフラはよく通る声で告げた。
「そして、俺たちの存在を世間に広める危険性のあるやつが出てきた。そいつがヒカルの死因を知っている可能性がある。よって俺たちは、そいつを捕らえ、消す必要がある」
シフラの中では決定事項なのか、彼はいかにも当たり前という顔でいるが、集まった人狼たちは戸惑いを隠せなかった。
「ごめんシフラ、もう少し詳しく説明してくれないか?」
ボロディン族の中でも発言力が強い人狼が、壇上のシフラを見上げた。
シフラは真っ直ぐ自分を見上げるその人狼に、一つのファイルを投げて寄越した。
「ヒカルの帰りが遅かったあの日、俺はヒトの姿になって町中を探した。その時、たまたまヒカルの匂いを纏う女を見つけた」
その女からは複数の人狼の匂いがした。
一体何者かと思い、しばらくその女の生活を監視していると……。
「白川カトリック教会に集うリリス族とかいう雑魚どもとつるみながら、俺たちボロディン族を滅ぼす計画を練っていた。ヒカルが匂いをつけたってことは、女は噛まれたはずだ。変身しているか死んでいるはずなのに、人間の姿で普通に生活しているのもおかしい」
あまりに突飛な話しに、大多数の人狼が困惑を隠せなかった。
彼らが落ち着きを取り戻すまで待つ気のないシフラは、ファイルを投げた人狼を見据える。
「気になるだろ?この女」
「そういうことなら、確かに気になるが……。どう捕らえるんだ?」
「ちょうど良い計画がある。俺たちを滅ぼそうとするとどうなるか、容易に想像出来るやり方でこの女を拐うんだ」
そしてシフラは不敵に笑い、計画を話した。