ホルケウ~暗く甘い秘密~
昼休み、昼食を弁当ではなくサンドイッチにしてあった偶然に感謝し、りこは急いで口に詰めた。
今日のサンドイッチは、クリームチーズとキュウリである。
紅茶は、このサンドイッチに合わせて、ダージリンのストレートを持参した。
5分ほどで食べ終え教室を出ようとすると、引き戸に手をかけた瞬間、嫌な視線を感じる。
しかしそれを無視して、りこは出ていった。
これから先、この視線をいちいち気にしていたらキリがない。
「遅くなりました。申し訳ございません」
図書室に入ると、いくつかの新聞を抱えた山崎が忙しなく動いていて、りこは咄嗟に謝った。
(次はもう少し早く来なきゃ)
決意も新たに、なにか手伝おうとしたりこだが、山崎はたいして気にしたふうもなく、新聞を持たせてきた。
「昼休みが始まって10分以内に来てくれればセーフだよ。ちょっとそれ持ってて。まず、最初の仕事の説明をする。受付カウンターの横にあるディスプレイに、今日のぶんの新聞を飾るんだ。この高校が取り寄せているのは、北海道新聞と釧路新聞、朝日新聞、読売新聞。シールが張ってあるところにこれを置いてくれ。新聞は3日ぶんあるから、一番後ろにあるやつをしまって、新しいやつを一番前に置くんだ」
説明しながら、てきぱきと山崎は新聞を回収していく。
そして回収した新聞を抱え、受付カウンターの後ろの司書室の鍵を開けた。
「入って」
りこを中に誘い、再び新聞を持たせると、山崎は『2014年度分』のラベルが張られた段ボールを引っ張ってきた。
「保管する新聞はこの中に入れる。流れはわかったな?」
「はい」
「じゃあ、次の業務だ」
受付カウンターの机の引き出しから、一冊の分厚いファイルを取りだし、りこの前に広げる。
ボールペンを片手に、山崎はおもむろに説明を始めた。
「まずは、担当者に自分の名前を書いてくれ。
それから、図書室に来た人数をカウントして、正の字で記していってくれ。貸し出しがあった場合は、この表に本の題名と番号を。それから、こっちの枠は返却期限だ。2週間後が返却期限。ここまで覚えられたか?」