ホルケウ~暗く甘い秘密~
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「どういうこと…………?」


りこは、自分の左手が掴んでいる一枚のスナップ写真に目を奪われていた。

その写真には、浴衣を着たりこと仁兵衛姿の玲が写っているのだが、玲のある部分が奇妙なのだ。

瞳の色が、違う。

りこの記憶にある玲の瞳は、黄金を練り込んだような柔らかなブラウンだ。

しかし、この写真に写っている玲の瞳は、濡れた黒曜石のような漆黒。

一瞬、もしやカラコンでもしているのかと思ったが、りこはすぐさまその考えを打ち消した。

何度か玲の目を至近距離で見たことがあるが、コンタクトはしていなかった。

また、間近ではなくとも、りこは目がよかったため、コンタクトをしているかしていないかくらいの見分けは出来た。


(怪我をして虹彩が変色した……?私が知っている限り、ブラウンからブルーに変わった事例ならある。でも、黒からブラウンってあるの?)


そもそもなぜ再会した時に気づかなかったのか。

思わずスマホのLINEを開く。

何度か質問を打っては消し、結局りこは何も聞かないことにした。

気にはなるし、知りたくもある。

しかし、何年も会わないうちに、玲はりこの知る玲ではなくなってしまった。

何より、今の玲はどこか掴めない雰囲気を纏っていたため、りこは踏み込んだ会話は無理だと感じたのであった。
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