ホルケウ~暗く甘い秘密~
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どうして、寄り道なんかしたんだろう。
ぼんやりとした頭の中で、久留米佐喜は後悔した。

遠回りして帰ろうだとか、暇潰しを探そうだなんて考えなければ、こんなことにはならなかった。

“あれ”に遭遇することも、なかったはずだ。

“あれ”に、犯された。その現実が、佐喜にはまだ受け入れられない。否、受け入れたくないのだ。


一時間前、町営野球場の裏手で、佐喜は若い男に声をかけられた。

見かけない顔と、ホテル街への道を訪ねたことから、佐喜はこの男がよそ者だと気づいた。

このようなシチュエーションに置かれた場合、たいていの女は警戒するが、佐喜には男に対する警戒心というものがなかった。

中学校にあがってすぐに処女を捨てた佐喜にとって、男とは自分にかしずき、快楽をもたらしてくれる存在だった。


(ホテル街まで案内して、向こうがその気になってくれたらヤっちゃおうかな)


ここ最近、バイトに明け暮れてまったくセックスしていないため、佐喜の欲求は溜まりがちだった。

数人いるセフレも、部活や勉強が忙しいらしくまったく捕まらない。


「まずは大通りに出ません?あたし、ホテル街まで案内しますから」


佐喜の提案に、男は無言だった。
そして次の瞬間、佐喜は両手を拘束された。


「な、何ですか!?いきなり!」

「何って、種づけだよ」


耳元で囁かれたその一言は、いやに鮮明に記憶に残っている。

手首を引き寄せられ、無理矢理キスをされた。

唇を割って入った舌のざらつきに体をすくめるが、男はむしろ愉快そうに唾液を流し込んできた。

刹那、その唾液の甘さに佐喜の目に涙が浮かんだ。


(何これ、気持ち悪い…………)


胸焼けしそうなほどの甘さに、頭がクラクラする。
そこからの記憶は、フワフワとしていながらも所々鮮やかであった。

ブラウスが千切られ、ブラも引っ張られる。

胸を荒々しく揉みしだいている間も、男は佐喜の舌を弄び続けた。

意識が遠退く中で、カチャリ、と金属の触れ合う音がした。

四つん這いにさせられた佐喜は、まったく慣らしていないそこに、いきなり一物を突っ込まれた。

にも関わらず、蜜を足らし、なんの痛みもなく見ず知らずの男の男根をすんなり受け入れている己の体に、佐喜は愕然とした。


(確かにセックスは好きだけど…………レイプされても濡れてるとか……)


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