ホルケウ~暗く甘い秘密~
緩やかに降り注ぐ木漏れ日を浴びたりこの背後で、ガチャリとドアの開く音がした。
反射的に振り返ったりこの視線は、目の前に立つ少年にたちまち奪われてしまった。
背はややりこよりも高いくらいだろうか。
襟足につくかつかないかくらいの、癖のない艶やかな黒髪に、雪のように白い肌。
黄金にライトブラウンの光を混ぜたような、ハチミツ色の瞳。
通った鼻筋。薄く、品良く納まった珊瑚色の唇。
睫毛は濃く、あまりの量の多さに、その白い肌に影を落としている。
浮世離れした美貌の少年が着ているのは、この町に二つしかない中学校のうちの、片方の制服だ。
中性的な美少年は、制服の学ランを着ていてもなお中性的だった。
おそらく、彼の華奢な体つきがそう見せているのだろう。
あまり長いこと見つめていたのか、りこはその美少年と目が合った。
(うっわ気まず…………)
あまりの美貌に目が眩み、無遠慮に観察してしまった。
眼福と喜ぶ自分を常識的な自分がハリセンでぶん殴る茶番劇が、脳内で一瞬にして流れる。
ばつの悪さを隠せないまま、視線を外して歩きだそうとしたりこだが、
「もしかして……りこさん?」
まだあどけなさが残る、しかしベルベットのようになめらかなテノールが、りこの耳に絡みついた。