ホルケウ~暗く甘い秘密~
「お前がここに来る少し前に、鹿野は森下と付き合っていたんだが、すぐに破局してさ。自暴自棄になった鹿野は、女遊びが激しいって有名な石田のセフレになって、森下への未練をたとうとしている。これは俺の勘だが、多分あいつまだ森下に未練あるぞ」
あまり聞きたくなかったクラスメートの暴露話だが、はからずもりこは、鹿野の非友好的な態度に納得してしまった。
「じゃあ、石田くんが鹿野さんを襲ったって可能性が浮上する……?」
「可能性としてはあり得るが、二人を知っている俺からしたら、それは無いと思う。石田はリスキーなことは避ける傾向にあるし、遊ぶなら安全にがモットーの奴だ。そういうプレイこそすれ、実際にレイプはまずないな」
「先生……もうちょっとオブラートに包んで言えませんか……」
今さらではあるが、りこは冷えきったジトリとした目で山崎を見ていた。
そんなりこの潔癖な性格を気にすることもなく、山崎はケロリとした顔で、
「俺はオープンだからな。良いだろ、他に誰かいるわけでもないんだし」
まったく気に止めることなく、流した。
「久留米のほうは、逆だな。久留米は男遊びが激しく、俺が知っているだけで四人セフレがいたはずだ。だがこいつも、人の彼氏には手を出さない性格だし、敵を作ってはいない。やっぱり、外部の誰かが二人を襲ったんだろう」
「これ以上、被害者が増えなければいいんですが……。保護者達の反応は?」
「俺に怒りをぶつけてくる、わけのわからない親はまだいないよ。ただ、生徒たちの間に動揺が走っている。どうやってその動揺を取り除き、授業に集中させるか、考えないと」
真剣な声音は、ついさっきまで明け透けに下ネタや暴露話をしていた時の山崎を消していた。
生徒を慮る、真摯なその姿に、りこは密かに尊敬の念を抱いた。
「それじゃあ、あとちょっとしたらどっかで休憩入れよう」
腕時計を見ると、白川町を出てからもう30分以上経っていた。
りこは自分でも気づかないうちに、山崎の隣を心地よいと思い始めていた。