ホルケウ~暗く甘い秘密~
「そうか……」
強姦は人生を歪ませるほど、凶悪な行為だ。
男の自分にはわからないが、被害にあった女性達はさぞ深い傷を負ったことだろう。
「次の被害が発生する前に、犯人像ははっきりさせておきたいんだがな……なにせ、黙るばかりで、なんも言わないんだ」
「そう言うな。町民に自衛の意識を持ってもらって、俺達もまめにパトロールして、当面はしのごう。マル害にはもう少し、時間が必要だろうよ」
しばらく田中と談笑し、湯山は煙草を吸いに屋上を出た。
田中と別れてからは、相次いで凶事が起こっているこの町、白川町に想いを馳せる。
煙草の煙をくゆらせ、深いため息をつく。
嫌な予感がした。
警察官の勘とは違う、人間の本能が発する警鐘が、湯山の中で鳴り響く。
(この手のことについては、スミス神父に相談するのが一番だな……。なにせ、超能力持ちだし)
湯山は、スミス神父の持つ力を知る、数少ない人間の1人だった。
そのため、嫌な予感がした時や、言葉にならない不安を抱いた時、スミス神父に話を聞いてもらい、意見を仰いだ。
運が良いときは、スミス神父の意見をきっかけに、事件の解決が近づくこともある。
それを期待して、今日の朝にでも教会を訪ねようか考えたが、さすがに急すぎる。
朝になったら電話で空いている時間を聞くことにし、湯山は仮眠を取りに、屋上を後にした。