ホルケウ~暗く甘い秘密~
ブツブツと何か呟き続けている玲を放置し、りこはりこで頭の中で盛大に一人言を漏らしていた。
(なに、なんなの他の女の子って……!一体どれくらいの女の子を食べてきたのよ!)
これは、脳内で処理しきれる案件ではない。
出来ることなら、大声で叫びながらクッションでも殴りたいところだ。
そう感情が訴えかけてくると、急にこの場に玲がいるのが疎ましくなってきた。
早く帰らないかな、などと自分が殺される危機に晒されているのをそっちのけで、りこは自分勝手にもそう念じていた。
「うん。応急措置しかないな、これは」
ようやく結論が出たのか、妙にすっきりとした顔で玲は爆弾を落とした。
「りこさん、今日から俺の彼女ね」
頭の中が真っ白になるとは、まさにこのことかと、一人で得心していたりこだが、いつまでも現実から逃げているわけにはいかなかった。
なんとも言えない、生ぬるいニヤニヤ顔で、りこはかぶりを振った。
「冗談でもきついって、玲」
「酷いなー。そんな不細工な顔になるくらい、俺と付き合うのが嫌?」
「いや待って。今のあんたの発言のほうがよっぽど酷いから」
「大丈夫、りこさんは気を抜かなければ可愛いよ。だから」
気を抜かなければは余計だ、と突っ込もうとしたりこだが、続いて発せられた玲の言葉に、声を失った。
「仮面夫婦ならぬ、仮面カップルをしよう。どう対策を立てるにしても、当面は俺がりこさんを守らなきゃでしょ?表立ってりこさんを守るためにも、一時的で良いから彼氏の称号をちょうだい」
心が、芯からゆっくりと冷えていった。
体もそれに比例して、爪先や指先に冷えが広がっていく。
(…………なんだ、そういうことね)
一瞬でも期待を寄せた自分は、なんと愚かなのだろう。
なにも行動していないのに、玲に好かれるはずがない。
それでも甘い言葉を聞いたら、都合の良いことを考えてしまうバカさ加減に、りこは自己嫌悪した。
「あーもー、誤解を招くような言い方はやめなさいッ!ちょっとビビったでしょ!」
わざとらしい説教口調。
大人ぶった余裕のある笑顔。
「そういうことなら、喜んで付き合うわ。ちゃんと私を守ってよ?」
なんでもない素振り。
大丈夫、取り乱したりなんかしない。
(なに、なんなの他の女の子って……!一体どれくらいの女の子を食べてきたのよ!)
これは、脳内で処理しきれる案件ではない。
出来ることなら、大声で叫びながらクッションでも殴りたいところだ。
そう感情が訴えかけてくると、急にこの場に玲がいるのが疎ましくなってきた。
早く帰らないかな、などと自分が殺される危機に晒されているのをそっちのけで、りこは自分勝手にもそう念じていた。
「うん。応急措置しかないな、これは」
ようやく結論が出たのか、妙にすっきりとした顔で玲は爆弾を落とした。
「りこさん、今日から俺の彼女ね」
頭の中が真っ白になるとは、まさにこのことかと、一人で得心していたりこだが、いつまでも現実から逃げているわけにはいかなかった。
なんとも言えない、生ぬるいニヤニヤ顔で、りこはかぶりを振った。
「冗談でもきついって、玲」
「酷いなー。そんな不細工な顔になるくらい、俺と付き合うのが嫌?」
「いや待って。今のあんたの発言のほうがよっぽど酷いから」
「大丈夫、りこさんは気を抜かなければ可愛いよ。だから」
気を抜かなければは余計だ、と突っ込もうとしたりこだが、続いて発せられた玲の言葉に、声を失った。
「仮面夫婦ならぬ、仮面カップルをしよう。どう対策を立てるにしても、当面は俺がりこさんを守らなきゃでしょ?表立ってりこさんを守るためにも、一時的で良いから彼氏の称号をちょうだい」
心が、芯からゆっくりと冷えていった。
体もそれに比例して、爪先や指先に冷えが広がっていく。
(…………なんだ、そういうことね)
一瞬でも期待を寄せた自分は、なんと愚かなのだろう。
なにも行動していないのに、玲に好かれるはずがない。
それでも甘い言葉を聞いたら、都合の良いことを考えてしまうバカさ加減に、りこは自己嫌悪した。
「あーもー、誤解を招くような言い方はやめなさいッ!ちょっとビビったでしょ!」
わざとらしい説教口調。
大人ぶった余裕のある笑顔。
「そういうことなら、喜んで付き合うわ。ちゃんと私を守ってよ?」
なんでもない素振り。
大丈夫、取り乱したりなんかしない。