ホルケウ~暗く甘い秘密~
再会した日ほどスピードは出なかったが(あれは異常だった)、それでも普通なら考えられない早さで、二人は高校に着いた。

まだ人はポツリポツリといる程度だが、もうそろそろ登校する生徒が増え始める。


「送ってくれてありがとう。じゃ」


そそくさと立ち去ろうとしたりこだが、玲がいきなり手を掴んだため、後ろに転びそうになった。


「あっぶないわね!なんなのよ、いきなり」


目を吊り上げて怒ったりこだが、それ以上に不機嫌な玲が低い声で唸った。


「今日、誰かと会うの?」

「友達と遊ぶ予定だけど、それがなに」

「なら、いつものすっぴんポニーテールで良いじゃん。無駄に気合い入ってない?」


無駄に、のところでカチンときたりこは玲の手を振り払った。


「なんであんたにそこまで言われなきゃいけないのよ!」


今度こそ教室に行こうとしたりこだが、カシャンと金属音がしたのに気づき、途中で振り返った。

そして頭に手を回され、髪の毛に暖かさが広がるのを感じ、それと同時に唇が触れ合う柔らかい感触に目を見開いた。


「い、いきなりなにするの!」


自分の置かれた状況を理解し、りこは顔を真っ赤にしながら玲を突き飛ばそうとしたが、筋肉の塊のような玲の体をどついたことで、かえって手首を傷めてしまった。


「大丈夫?」

「大丈夫なわけあるかこの筋肉バカッ!どうやったらそんな人間凶器に育つのよ!」

「次からは武器使った方がいいよ。まともに俺をどついたら、りこさんが死んじゃうから」

「是非そうするわ」


甘い空気が一瞬にして砕け散ったが、玲は満足げに笑っていた。

いつの間にか機嫌が良くなっていることにイラッときたりこだが、今はさっさと学校に入るのが先決である。

ケンカを売ることなく今度こそ校門を過ぎていった。


(まったく、テストがあるっていうのに朝からなんでこんなに体力消費してんのよ私)


重いため息をつきながら、ようやく玄関に入ったりこだが、自分の下駄箱付近で話し声が聞こえたため、条件反射で立ち止まった。


「ムカつくよね、春山。朝っぱらから男連れて登校とか、調子に乗ってない?」

「しかもあれ、白川中の呉原玲じゃん。なに、イケメンの彼氏持ちアピール?」

「うっわ、性格最悪。なんで山崎先生、あんなやつかばってるわけ?」
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