戦乙女と紅(ヴァルキリーとくれない)
第二章 一騎当千

軍議の際、乙女は小国周辺の地図を机の上に開いた。

「これがこの国周辺の地形だ。見ての通りこの国は大きな湖に囲まれる形になっている…これが城で言うところの堀となり、外敵の侵入を阻んでいる。だが私は、篭城などするつもりはない。物資の乏しいこの国で、篭城などしても飢えを待つばかりだ。この地形はあくまで攻められた時にのみ効果を発揮するものだと覚えておいて欲しい」

「無論だ。俺とて多少の兵法は心得ている。それに守りに徹する戦い方は性に合わぬ」

俺は地図から目を離し、乙女を見る。

「地形はわかった。次は大国の兵力について訊きたい」

俺が言うと、乙女は無言のまま頷いた。

「我が軍が約五万の兵なのに対し、大国はその五倍…二十五万はいると思っておいてくれて構わない。そしてそのうちの二百は精鋭部隊となっている」

「精鋭部隊?」

俺はオウム返しに問いかけ、乙女はもう一度頷いた。

「剣術、槍術、弓、馬術…戦に必要なありとあらゆる技術を極めた、戦闘の玄人のみで構成された、大国最強の部隊…まだ奴らはこの国の攻略に本腰を入れていない為に精鋭部隊を投入していないが…」

乙女は唇を噛んだ。

「もし彼らが戦線に出てきたら、これまでのようにはいくまい…」






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