戦乙女と紅(ヴァルキリーとくれない)
ともあれ、ある程度の勝算は見込める。

あとは、その精鋭部隊とやらが出てくる前に、どれだけ大国の兵を削る事ができるかだ。

大国はまだ、俺という存在が小国についた事を知らない。

この国を舐めてかかっている筈だ。

数に物を言わせ、大軍を率いてこの国を押し潰す気でいるに違いない。

しかし、それこそが勝機だ。

兵の数が多ければ多いほど、逆に言えば大国の兵力を削る機会が増えるという事だ。

「簡単に言うが、紅」

乙女は俺の顔を見る。

「相手は二十五万の軍勢だぞ?如何に貴方が強いとはいえ、たった一人でそれだけの大軍を倒せるとは思えない」

「無論俺一人ではないさ。お前にも手を貸してもらう。それに」

俺は不敵な笑みを浮かべる。

「俺とお前が超人的な働きをすればするほど、追従する兵達の士気もあがるというものだ。この戦は、俺とお前がどれだけ強さを見せ付け、自軍の兵を魅了するかによって勝敗が決まる」

…そう。

神がかった強さを持つ主君を持つと、兵は暗示にかかる。

自らにはこれほど強い主君がついている。

我々は神に守られているのだと。

神という大義名分を得た兵達は、実力以上の力を発揮するのだ。

「…成程」

感服したように、乙女は溜息をついた。

「大した戦略家だ、貴方は」

「口八丁手八丁と言ってくれ」

俺は笑った。

< 16 / 87 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop