戦乙女と紅(ヴァルキリーとくれない)
軍議を終え、俺は部屋から出る。

ここは小国の王宮。

とはいえ、然程大きくない国の王宮だ。

広さもたかが知れている。

「ちょっと待て、紅」

乙女に追いつかれるのもあっという間の事だった。

「なんだ?」

「いきなり無粋な話なのだが…」

そう言って、乙女は言いよどむ。

「その…貴方の報酬の話だ…見ての通りこの国は物資にも資金にも乏しい。貴方ほどの自由騎士が私達の味方になってくれるのは心強いが…その…」

「わかっている」

俺は乙女の方に振り向かぬまま返事した。

「戦の最中の国の財政など、どこの国も似たようなものだ。すぐに報酬を求めるほど俺も下衆ではないし、働きもせぬうちから吹っ掛けるほど身の程知らずでもない」

「…そうか」

乙女は安堵の溜息を漏らした。

「…報酬は俺の働きの後で頂くとしよう。無論、働き以上のものは貰わぬが、過小評価も納得はせんぞ」

「勿論だ」

強く頷く乙女。

「私も恩義には必ず報いる。貴方がこの国の為に命を賭けるのならば、私も恩義の為に命を賭けよう」

「…それを聞いて安心した」

俺は微かに笑みを浮かべたまま、長い王宮の廊下を歩いていった。

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