戦乙女と紅(ヴァルキリーとくれない)
自由騎士になり、幾度かの戦を生きのびた頃、俺には二つ名がついていた。

『紅の自由騎士』

何の事はない。

俺がいつも身につけている真紅の外套からついた名だ。

騎士にしては軽装で、物々しい鎧も身につけていない。

その代わり、戦場では一際目を引く赤い外套が、俺の象徴のように見えたのだろう。

いつしか俺は本名ではなく、紅の二つ名で呼ばれるようになり。

俺自身もまた、その名を気に入っていた。






…草原を、ひたすら歩く。

見渡す限りの地平線には風だけがひた走り、大地には青々と茂った草と…累々たる兵士の屍が横たわっていた。

…近隣の国同士が、戦をしているらしい。

食事と休息の為に立ち寄った村でそんな噂を聞き、俺はここに来ていた。

片や、数十万からの兵士を抱える大国。

片や、五万いるかいないかの兵力しか持たない小国。

火を見るより明らかな戦だった。

このような勝ち戦に自由騎士など雇う必要はなく、俺も最初は話程度にしか聞いていなかった。

しかし。

現地に来て、俺は改めてこの戦に興味を惹かれた。

…草原に横たわる兵士達はみな、大国の鎧をまとっている。

この兵士達はみな、小国との戦に敗れた大国の兵士達なのだ。

兵力に圧倒的な差がありながら、小国に苦汁を舐めさせられた大国。

その小国に、どれ程の力があるというのか。

俺はそれに興味があった。

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