戦乙女と紅(ヴァルキリーとくれない)

翌日。

「紅様!!」

乙女にあてがわれた専用の部屋で休んでいると、一人の兵士が駆け込んできた。

「報告いたします!大国の軍勢が我が領土内に進軍してまいりました!その数およそ七万!!」

「…来たか」

ベッドに横たえていた体を起こす。

いよいよこの小国の傭兵としての初陣だ。

俺は早速、乙女の下へと急いだ。






騎士達の控えの間に向かうと、既に乙女は甲冑を身にまとっていた。

「紅、報告は聞いたか」

「ああ。七万だそうだな。腕試しとしては適当な数だ」

俺の言葉に、乙女は憮然とする。

「馬鹿を言うな。七万と言えば、我が軍の総数より二万も多い。それのどこが適当な数か」

「…お前には、俺を過小評価するなと言ったが…」

俺は右手を自分の腰に当てる。

「どうやら自分自身の事も過小評価しているようだな、お前は」

「何…?」

驚いたような顔をする乙女。

俺はそれには目もくれず、控えの間に集まっている兵達に言った。

「出陣後、全軍距離を保って待機。以降は別命あるまでその場を動くな」


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