戦乙女と紅(ヴァルキリーとくれない)
撤退する大国軍を見ながら、私は馬の歩を止める。

「追わなくていい!撤退する兵は見逃してやれ。投降する兵に関しては、丁重に扱え。傷つける事は絶対に許さぬ」

私は追従する軍の騎士達に向かって叫んだ。

「此度の戦は我が軍の勝利だ!!」

その言葉に、歓声が上がる。

地平線の彼方にまで響くような勝ち鬨。

それはまさに、勝利の雄叫びであった。







「報告いたします、乙女!死者0名、負傷者57名、うち1名が重傷です」

伝令の兵が私に報告してくる。

「そうか…行こう」

私はその重傷の兵のもとへと向かった。

…その兵は左肩から右の脇腹の辺りまで、大きく斬られていた。

恐らくは斬撃をまともに正面から受けてしまったのだろう。

出血も多く、呼吸も荒い。

恐らくはもう…助からないだろう。

「お…乙女…乙女…」

横たわったまま、息絶え絶えに言葉を発する兵士。

「無理に喋るな。楽にしていればいい」

私は兵士の側にしゃがみ、返り血にまみれる事も厭わずその手を握り締めた。


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