戦乙女と紅(ヴァルキリーとくれない)
それでも兵士は必死に言葉を紡ぐ。

「乙女…申し訳ありません…私のせいで…せっかくの勝ち戦に…水を差してしまい…」

「何を言う」

私は兵士に微笑みかけた。

「此度の勝利は、そなた達のような優秀な騎士が獅子奮迅の働きを見せてくれたからこそ得られたものだ。この勝利はそなたが導いたものなのだ。胸を張れ」

「し…しかし…ごほっ…!」

咳き込むと同時に、兵士が吐血する。

私の甲冑に、頬に、真っ赤な血が飛び散る。

だが私は兵士の手を放さない。

飛び散った血を拭う事もしない。

「お…乙女…どうか…お放しを…私の血で…穢れてしまいます…」

「何が穢れるものか。尊い兵士の血に、何が穢れがある」

…兵士の手が、力なく、どんどん冷たくなっていく。

その事が悔しくて、涙がこぼれた。

「すまぬ…私がもっと強ければ…私にもっと力があれば、そなたを死なせる事はなかった…非力な私を許してくれ…」

「乙女…勿体のう…ございます…」

兵士は弱弱しく、しかし満面の笑みを浮かべる。

せめて…せめて安らかに、痛まぬよう、苦しまぬように天に召されてくれ…。

祈りを込めて、手を握り締める中。

…兵士は、静かに息を引き取った。




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