戦乙女と紅(ヴァルキリーとくれない)
宴はまだ始まったばかりだというのに、既に皆、酒も入ってほろ酔い気分のようだった。

子牛の丸焼きの取り合いをする二人の兵士、それを見て笑う仲間たち、どこからか楽器を持ち込んで弾き語る者、それに合わせて歌う者、その歌が下手だと野次を飛ばす者…。

皆に共通するのは、笑顔。

戦場では見る事のない、気持ちがいいほどの笑顔だった。

私は兵士達のそんな笑顔を見ながら、グラスの酒に口を…。

「お前はまだ駄目だ」

誰かが私の手からグラスを取り上げた。

見れば、隣に紅が立っていた。

「何をする。私の酒だぞ」

「私の酒、ではない。お前はまだ子供だ」

紅はそう言って、まだ口もつけていない私のグラスを飲み干してしまった。

少し憮然とする私。

そんな私をよそに。

「…いい国だな」

騒ぐ兵達を見ながら、紅は呟いた。

「この国には温もりがある。仲間の死を悼み、友の傷を庇い、戦の勝利を共に分かち合う」

「当然だろう、私の国だからな」

誇らしげに私は呟く。

それに。

「そのような事、どこの国でも同じ事だろう」

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