戦乙女と紅(ヴァルキリーとくれない)
こんなに窮地に立たされる事など戦場でもなかったというのに。

ドレスの裾を握り締め、困惑してしまう。

いつの間にか、膝が震えていた。

膝どころか、全身が小刻みに震える。

「案ずるな。痛い事はないし、この事は他言無用でいてやる。これをネタにお前を強請るような事もしない。騎士の誓いだ」

「しっ…しかし…」

私は首を横に振る。

これでは聞き分けのない子供だ。

我ながら醜態を晒しているなと思った矢先。

「騎士には潔さも肝心だと思うがな」

そう言って。












素早く腰に手を回し、抵抗できぬように私の右手を掴んで。

紅はいとも簡単に、私の唇を奪い取った。







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