戦乙女と紅(ヴァルキリーとくれない)
国に戻り、騎士達は控えの間で思い思い談笑している。

今日の戦の事、勝利した喜び、新調した甲冑の使い心地など。

勝ち戦だった事で緊張から解放され、騎士達の表情は和らいでいる。

そんな中、私だけが緊張した面持ちで紅の側に歩み寄った。

「紅、ちょっといいか」

私は紅を呼び寄せる。

「少し話がある。外に付き合ってくれ」

「…いいだろう」

紅は別段驚いた風でもなく、いつもの表情で私についてきた。






王宮の廊下。

他の者のいない静かな場所で、私はドレスにも着替えずに紅と向き合う。

「何だ、この間の体術の話か?教えてやらんでもないが、少し休ませてくれると助かる」

「いや、そうではない」

一言、一言確認すればいいだけというのに…何故か今になって、酷く緊張した。

まるで、この先は言わぬ方がいい、聞かぬ方がいいと念押しされているような。

聞けばこの男を疑わずにはいられなくなると、耳元で誰かが囁いているような気がした。

…そんな事はあるものか。

紅は私やこの国の為に戦ってくれると言ってくれた。

あの宴の夜、私と口づけを交わした後にそう宣言してくれた。

そう、これはただの確認。

その為の問いかけだ。

< 47 / 87 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop