戦乙女と紅(ヴァルキリーとくれない)
指揮官は紅を馬上から見下ろす。

「だが貴様が我が軍に来たところで、また小国軍に寝返るとも限らん。それで貴様を受け入れろというのか?」

「あの戦乙女の国にか?」

冗談だろう、とばかりに紅は笑う。

「俺とて阿呆ではない。今日の戦で戦力差は見切った。一人の英雄よりも数多くの兵士。結局戦とは兵力なのだ。戯れに小国軍についてみたが」

紅はチラリと私の姿を一瞥した後。

「沈み行く船と運命まで共にする気はない」

冷たくそう言い放った。

「正直な男だ」

指揮官は笑う。

「よかろう。貴様ほどの腕前ならば、すぐにでも部隊を任せられる」

「ちょうどよかった。ならば」

紅は、そばに立っていた蛇の紋章の騎士を見る。

「この精鋭部隊を任せてはもらえんか。こいつらなら、のぼせ上がったヴァルキリーでさえも斬り刻めよう。血に濡れて跪く戦乙女、ご覧に入れることが出来るが?」







本気で…本気で言っているのか、紅…?




「ふはははははっ、本当に愉快な奴だ、お前は!!」

愉しげに指揮官が笑った。

「よかろう、その辺の事は一度帰ってから、軍議の中で決めようではないか」

「承知した」

…大国軍と紅。

両者は私から遠ざかっていく。

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