戦乙女と紅(ヴァルキリーとくれない)
廊下を歩いていると、すれ違う大国軍の兵士が俺を避けるように横へそれた。

そこで初めて…俺は自分が苛立ちに満ちた形相をしていた事に気づく。

…何だ、紅。

乙女に裏切り者呼ばわりされる事がそんなに気に入らぬか。

己の心の内に問いかけてみる。

小国に来る前のこれまでの戦とて、このやり方でやってきたではないか。

その結果はどうだった?

見事なまでの勝利だったではないか。

時にはかすり傷一つ負う事無く勝ち残る事さえあった。

手応えを感じただろう?

このやり方が自分には一番あっている。

このやり方なら俺は戦場で敗北する事などない、と。

「……」

なのに何故だ。

こんなに心乱すのは…。

乙女の笑顔が曇る事が、それほどまでに口惜しいか。

…ギリ、と歯噛みしながら、俺は冷静さを取り戻そうと努力する。

気に病むな。

それもこれも、この作戦が終わればすぐに忘れる。

この、『確実な勝利のための作戦』さえ終われば。
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