戦乙女と紅(ヴァルキリーとくれない)
夜。

大国から見える月も小国から見える月も、どちらも変わらない。

そして今宵は…滴る血のような赤い月だった。

「紅様」

予期していた通り、大国の兵が俺の元にやってくる。

「明日、小国への総攻撃が決定しました。軍議の結果、紅様の提案した作戦が採用されたとの事です」

「ほぅ…」

俺はニヤリと笑う。

「ならば『勝ちは頂いたも同然』だな」

「はい!」

力強く兵士は頷いた。

「明朝夜明けと共に進軍開始。紅様は精鋭部隊を率いて、小国付近の小高い丘の上で待機、機を見計らって突入せよとの事です」

成程。

俺の進言した作戦通りという事か。

そのまま何の捻りもなく作戦を採用する辺り、この国の上層部はやはり無能と見える。

「承知した」

俺はそれ以上の興味を失い、兵士から視線を外した。

明日か。

思ったよりも早かったな。

これで決着がつく。








思えば戦友としては、短い付き合いだったな、乙女。






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