戦乙女と紅(ヴァルキリーとくれない)
その私の憤怒に、恐怖を覚えたのか。

「射れ!!射れえっ!!」

指揮官は弓兵に命じる。

途端に私に対して放たれる無数の矢。

私はそれを、剣を振りつつ突進することで、最小限の被害にとどめた。

飛んでくる矢を剣で払いのける。

無論、全てが払える訳ではない。

肩に、腕に、矢が突き刺さる。

激しい痛みと共に、私の体を矢が貫く。

しかし、その痛みを怒りと気迫で押し込め、私は突進した。

このような痛みより…紅が裏切った痛みの方が…苦痛だった!!

「おおおおおっ!!」

気合の声と共に弓兵との間合いを詰め、刃を振り下ろす!!

「ち、近づけるな馬鹿者!!早く叩き斬れ!!」

恐れをなした指揮官が、兵を盾にしながら叫ぶ。

「戦乙女、覚悟!!」

大国兵の刃が、私の背中を斬りつける!!

「……っ……!!」

その痛みを、唇を噛んで耐えた。

このような痛みより…仲間を殺された痛みの方が…苦痛だった!!

振り向き様に横薙ぎの刃で敵の騎士を両断する!!

大国の騎士達からは、私はまさしく大鎌を振るう死神に見えた事だろう。

矢で射られても、剣で斬られても倒れる事無く、前進してくる。

その姿に。

「戦乙女に続け!小国はまだ…負けてはおらぬ!!」

残った小国軍の兵士達も、再び奮い立った。

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