戦乙女と紅(ヴァルキリーとくれない)
戦いが終わり、そこここで負傷者の手当てが始まる。

大国の兵士を治療する小国兵。

小国兵に肩を貸す大国兵。

最早お互いに憎しみをぶつけ合う事もない。

この国は、一つになったのだ。

そんな中、私は。

「紅!!」

立ち去ろうとする紅に駆け寄っていた。

「どこへ行く?話があるのだ」

「……」

立ち止まった紅は、私の方を見た。

「酷い姿だな。戦乙女が台無しだ。早く傷の手当てを済ませろ」

「それは貴方とて同じだ」

…象徴たる真紅の外套はズタズタに裂け、矢傷、切り傷は数知れず。

体にこびりついた血は、最早己のものなのか返り血なのか見当もつかない。

紅の戦いがどれ程過酷なものだったのかは、その姿を見れば十分にわかる。

「…我が国の為に戦ってくれたのだな。裏切り者の汚名も厭わずに」

「言っただろう」

紅は目をそらす。

「俺は勝つ為にしか戦わぬ。その為なら手段は選ばんさ。汚名とて喜んで受けよう」



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