十五晩瞳の奇跡
Ruby EYE
暦は2008年、一月十五日。


大学卒業まで数ヶ月を控えた私はアルバイトに明け暮れていた。


就職も決まり安定した毎日を送れる、そう思うだけで嬉しかった。


「今日も寒いな…。」


帰りがけの夜の街はすっかりネオンに包まれていた。







歩道橋を渡り焼肉屋さんの前を通りかかると、隣にいつもあるはずの居酒屋は無く洋風のアンティークなお店が建っている。


「こんな所…あったっけ?」


小洒落た出窓には小さな紫色のバラが飾られている。



私はまるで吸い寄せられるようにお店の扉に手をかけていた。


入るなりドアのベルが鳴り、オルゴールの音色が聞こえて来る。


知らない曲なのにどこか懐かしくて悲しげな旋律は、白木の小さな小箱から響き渡っていた。



そして身体は硝子のテーブルに置かれた小箱に近付いた。


カウンターに店員さんの姿はない。


タキシード姿の兎の置物がじっとこちらを見つめていた。


まるで、小箱を開けてと追い討ちをかけるかのような表情…


好奇心に駆られて、そっと小箱を開けた。

小さな封筒と、滴を型どったルビーが仕舞われていた。

アクセサリーのパーツが何一つ付けられていないそのルビーは、くり貫かれた兎の目と同じくらいの大きさだった。

まさか…ね






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