紫陽花と君の笑顔



 「あーダメだ。ごめん母さん、もう少し一人にさせてくれないか。泣いてしまうそう、だから」





 と言っている傍から、涙が溢れてしまう。


 母さんには泣き顔を見られたくなくて、立てた膝に顔を埋める。


 こんな情けない姿、誰にも見られたくはないのだけれど。





 「――っ、ぅ……」





 「――そうね。玲太と舞桜ちゃんは、いつも一緒だったものね」





 母さんは何かを察してくれたのか、少し思い留まるような素振りは見せたものの、それ以上は何も言わずに部屋を後にした。





 ごめん、母さん。





 その寂しそうな背中を見れば舞桜が居なくなったことをいつまでも悲しんではいられないとは思うのだけれども、やっぱり、忘れられるはずがない。


 俺が母さんを支えていかなくちゃ。


 分かっているのに、その重荷はなかなか取れない。





 ――玲くん、大好き。





 どれだけ願っても、舞桜の意識は二度と戻らない。


 その冷たい手が、俺の手を握り返すこともない。

 虚無感に包まれるしかなかった俺には、どうしようもなく抑えられなくなった涙を流すしか、残されていないのだろうか?

 俺は、あいつに愛してるとさえ、もう言えないのに――


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