紫陽花と君の笑顔
「さて、主役も揃ったし、いきますか!」
もう一人の友人であり、軽音楽部の部長を務める、鷺沼 蓮(サギヌマ レン)が私物のギターを抱える。
そして、ハッピーバースデートゥーユーのアレンジ曲を奏ではじめた。
アップテンポなアレンジは、元気で活発だった舞桜を連想しているのだろうか。
歌っている最中なのに、どうしても彼女との思い出が脳裏を横切っていく。
しまいには嗚咽に邪魔されて呼吸さえ儘ならないほどに俺は泣きじゃくり、皆に恥ずかしい姿を晒してしまった。
「ハッピーバースデー、トゥーユー!」
伴奏はギターだけの質素な合唱。
けれどそれは、皆の、舞桜への感謝の気持ちがぎゅっと詰まった最高の歌だった。