紫陽花と君の笑顔
辛抱強い愛情
急遽行われた通夜のあと、がらんどうになった病室で俺は一人立ち尽くした。
彼女の余生は、ほとんどここで過ごしている。
こんなことなら、無理やりにでもうちに連れて帰っておけばよかった。
そして、最後の一時まで、あいつの傍にいたかった。
そんな思いばかりが募っていき、いつの間にか俺は、だらりと下ろしていた拳を握り締めていた。
唇をかみ締め、涙を堪えてあげた視線の先に、キラリと輝く何かを見つける。
それはつい先ほどまで舞桜が横たわっていたベッドの上。
なぜか息を潜めて近寄る。
よくよく目を凝らすと、シルバーの指輪が、白い紙を括り付けられたまま転がっていた。
「なんだ……これ」
拾い上げて、俺は手の上でそれを転がす。
綺麗に手入れされているそれには、筆記体で『REITA』と彫刻されている。
「俺の……?」
訝しげに見つめた瞳は、指輪に括られている紙を捉えた。
破れないように そっと解いた紙には、小さな字で何かが書かれている。