また俺が助けるから。
怖くないこの瞬間を無駄にしないために、首にかけていたゴーグルを装着して息を大きく吸い込む。



酸素が私の体を駆け巡って、体が空気で満たされた。



そして次の瞬間…………



どぼん!



という大きな音を立てて、私は立っていた場所より数メートル先へ飛び込んだ。



まだ浅瀬。



身長の低い私でも、さすがに今のところはおぼれない。



これでおぼれたら、天才的なカナヅチ。



いや、そもそもカナヅチ以前の問題がある気がする……。



さて、ブツブツ言ってないで行きますか。



ドキドキする胸を押さえて、バタ足で進む。



仕方ないんだ。



基本のバタ足しかできないから。



この歳でクロールができない私もどうよ……と、自分で勝手に悲しくなった。



ジャブジャブと音を立てて、小さい波に立ち向かう。



でもバタ足じゃ……



「っぶは!……げほっ」



息が続かないのがお約束。



もう1回息を吸い込んで、またバタ足。



あーあ。他の泳ぎ方がしてみたいのに……。



なんて、無理なお願いを考えてみたりする。



そしてまた息が続かなくなって、立とうとしたとき……



「!」



うわっ。



いつの間にか、私の足海底に届かない沖にいた。
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