また俺が助けるから。
「……」



何もしないのもつまらないから、持ってきた参考書を開く。



こういう時のために、参考書は持ってきて正解だと思った。



大体こうなることは予想済み。



だって毎年そうだから。



夏になったら、海へ行く。そこで私は誘われて海に入るも、溺れる。



で、参考書を開く。1日が終わる。



1年経って、また夏がめぐってくる。また海へ。そして溺れる。



また参考書の出番。1日が終わる。



この無駄な無限ループを、誰か止めてほしい。



海を、心の底からいいと思えるような素敵なエピソードが……あるはずない。



運命の王子様なんて、こんなところにいないでしょ。



海にいるなら毎年海に来ているここの一家はどこかで出会うはずだもん。



これだけ来ていて出会わないなら……期待しないほうがいいに決まってる。



「あははっ、ちょっとパパ、しょっぱい!」


「何言ってるんだ、昔はよくこうしたじゃないか~」



遠くでお父さんとお母さんが海水をかけ合っている。



……ちょっと羨ましい。



私も、波打ち際でパシャパシャやることにするかな。



……ちょっとだけ。
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