また俺が助けるから。




波打ち際で水を含んだ砂を掴んでは流し、掴んでは流す。



隣で知らない小さな男の子が私と同じことをやっている。



楽しいのかな。



少なくとも私にはまったく面白くない。



やっぱり泳がないと海に来た意味はないよね。きっと。



一応、服の下に水着を着ている私。



お母さんが嫌がる私を制して無理矢理着せた。



本当は泳ぐつもりなんてなかったんだ。



でも、羨ましくなったっていうか……。



まあいいや!日が沈まないうちに私も泳ごう!



寒かったら余計にトラウマが増えるだけだもん。



もう泳げないことでトラウマが増えるのは嫌。



今年こそ、泳いでやるんだ。



よーし、と気合いを入れて服を脱いでシートめがけて投げる。



元バスケ部だった私。



脱いだ服はシートへと吸い込まれていった。



なんだかシュートが決まったようで、心の中がほんわかと暖かくなった。



こうやって気分よくスタートできると、自分がカナヅチだってことも忘れられる。



泳げない事実には、変わりないのだけれど。
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