君とさよならの時間 ~大好きの涙~
本当なら中学生に上がる、13歳のころ。
もちろん私は中学校なんて行けなくて。
また藤井先生や看護師さんに勉強を教えてもらっていた。
勉強は難しいけど、楽しくて。毎日欠かさずやっていた。
もうその頃には、家族の顔は思い出せなかった。
どんな顔、どんな髪、どんな性格。
なにもわからなかった。
中学三年生のはずの15歳の誕生日。
藤井先生が、私のために507号室をプレゼントしてくれた。
「ここが愛美ちゃん専用の部屋だよ」なんて言ってくれて。
嬉しかった。けど、同時に寂しさを感じた。
だって、こんなに広いのに私だけだなんて。