あくまで小悪魔【BL】
「これ、職員室に運ぶの手伝って~」


俺の眼前まで来た一条は、予想通りの言葉を発した。


「何だよ。こんなの週番にやらせりゃ良いじゃん」


その為のシステムだろうに。


「だって、パン買いに行くからって、逃げられちゃったんだもん」


言いながら、一条は唇を尖らせた。


……男のくせに、こんな可愛らしいリアクションを、ためらいもなくできる所がすごいよな。


いや、つーか、それ以前に……。


「しょうがねぇなぁ」


俺はため息をつきながら、一条の手からノートを譲り受けた。


さりげなく半分以上を受け持ってやる。


「ありがとう~」


俺より数センチ背が低い彼は、上目使いに、はにかみながら礼を述べた。


『うっ』


不本意にも、そのしぐさに、尋常じゃなくドキマギさせられてしまう。


いや、この場合は仕方がない。


別に俺が変態な訳じゃない。


その事実を知っている者ならば、誰だって目の前の光景に心乱される筈だ。


ホント、信じられねぇよな……。


俺は目の前の一条の顔を、改めてまじまじと見つめた。


この男が、俺達1―Cの副担任だなんて。


今年30歳になる、我が高校の、れっきとした、教師だなんて……。
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