あくまで小悪魔【BL】
「ごめんね~?お弁当の時間なのに」


「今さらじゃん」


特別教室棟へと続く渡り廊下を、並んで歩きながら会話を交わす。


ノートの量は大分減った筈なのに、一条の歩調は相変わらずどこか危なっかしい。


1年の教室と職員室は同じ1階で良かったよな。


こんなんで階段移動なんかしたら、絶対転げ落ちるぞ、この人。


ホント、とても一回り以上も年上には見えない。


「司藤はパン買いに行かないの?」


一条はこちらをチラリと見つつ問い掛けてきた。


「俺、弁当だもん。うちの購買のパンコーナーは恐ろしく混むってのはもう入学して数日で思い知ったから。毎日そんな戦場に赴く度胸はねーよ。だから、それ以来俺は弁当派」


「お母さんの手作り?」


「まぁね」


「そっか、感謝しなきゃだね」


一条は小首を傾げつつニコッと微笑んだ。


その動作に、またもや俺の鼓動は跳ね上がる。


俺らからしたら30前後というのはもう立派なおっさんで、その言葉だけを耳にしたらそれに相応しい容姿が脳裏に浮かぶ。
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