僕らが大人になる理由
「え、なにかあったんですか?」
「なにかあったんですかじゃねえよ、ありまくりだよバカ野郎」
「え、詳しく聞きたいです」
「駄目だ。俺があの話をまだ紺ちゃんに確認してないし真冬に話すことによってもっと複雑になるしそれであの二人が別れたりしたら俺はとても不利な状況になるよって俺は俺のために言わないよ」
「………す…すみませんもう一回言ってくださ…」
「休憩おーわりっと」
光流君がコップを流し場に持って行って、わたしの頭をこつんと叩いた。
あまりにも早口過ぎて、何を言っているのか理解するまでに終わってしまった。
別れる…?
不利…?
それって、どういうこと?
眉間にしわを寄せていると、光流君が今度は頭突きをしてきた。なんなんだ。痛い。
訳が分からなくておでこをおさえたまま光流君を見上げると、
「お前は本当に紺ちゃん紺ちゃん紺ちゃんだなっ」
と、また訳の分からない捨て台詞を吐かれた。
……はい?
なんで光流君は怒ってるの?
あたしはどうして頭突きをされたの…?
痛むおでこをおさえながら、わたしは数秒間かたまった。
さすがロボットというあだ名だけある…。
休憩を終えたわたしはじっと紺君を見つめながら、その動作、視線を観察していた。
もはやコミュニケーション手段が『A了解です、Bお願いします、C後にしてください、』と3択しかない今、もはや見つめることしかできない。
光流君にこの状況を訴えてもスルーされるだけ。店長は今日もいない。
あたしは一体、何をしたというのだろう…。