僕らが大人になる理由
…ああ、そういえば紺君にバレたんだよな。
俺が真冬のことを好きだってこと。
「真冬、さ」
「はい」
俺は、再び洗い場に戻ってから、ぼそっと真冬の名前を呟いた。
ここんとこ真冬は紺ちゃんに冷たくされてるということで悩んでいる。
紺ちゃんはいつも冷たいから一見そんな風には思えないが、なんだか俺は嫌な予感がしてたまらない。
「紺ちゃんと仲直りした?」
「仲直りも何も…喧嘩なんかしてませんもん」
「知らないうちに怒らせたんじゃない?」
なんつって。
紺ちゃんは怒ったときはスパッとその場で言って引きずらない性格なのを知ってて、俺はそういった。
だからきっと、紺ちゃんは怒ってるわけじゃなくて、他に真冬に近づきたくない、近づいちゃいけない理由があるんだ。
由梨絵ちゃんの警告か、それとも…。
なんだか嫌な予感しかしない。もし後者が理由だったら、俺終わりじゃん。
『俺は俺のために言わないよ』
そうだ。この予想も、俺は俺のために言わない。俺はそういう性格だ。悪い意味で思慮深い。
「ぎゃーーーっ」
1人すこし暗い気持ちになっていると、真冬が突然悲鳴をあげた。
「なに、どうした、Gか。Gなら俺は何も協力できないぞ」
「違います、今ゴロって、めっちゃ大きい音したじゃないですか」
「あー雷?」
「いやーっ、やだ怖い帰りたい!」
「落ち着け。お前の家二階だろが」
真冬は耳を両手でふさいでいた。いやそれじゃモップ掛けできんだろう。
なんて思っていたらまた部屋が白い光に包まれて、すぐに大きな音がした。…結構近いな。
真冬は冷静な俺とは対照的にもっとヒステリックになっていった。なんでも昔から大きな音や暗闇が怖いらしい。
一旦落ち着けって。
そう言おうと思っていたら、突然部屋の明かりがふっと消えた。