僕らが大人になる理由


「え、長期休暇…?」

「そうらしいわよ」

「なぜですか」

「年末に実家に帰って何がおかしいの?」

「だって、真冬の家は…」

「もう紺ちゃん、はやく宴会の準備してくれないと、こっちも用意すすめられないわ」

「すみません」


真冬の長期休暇のことについて、最後に知ったのは俺だった。

店長は『あれ? 言ってなかったっけ?』みたいな顔するし、あゆ姉に至ってはその件につて全く話そうとしてくれない。

あゆ姉に叱られて仕事を再開したけれど、頭の中では真冬のことが心配で仕方なかった。


だって、あの兄がいる家なんて…。

帰ってもきっと楽しくないはずだ。


「いつ、帰ってくるのでしょうか」

「分からないわ」

「そうですか」



そうか。

暫く真冬は、帰ってこないのか。



「…寂しいの?」

「いえ、心配なだけです」

「……それ、由梨絵ちゃんに聞かれたら大変なことになるわよ」

「え?」

「…真冬ちゃんに、心を悩ましているってことでしょう?」

「…それは言い方の問題です」

「あらあら」


あゆ姉は、呆れたような声を出した。

店長もそれを真似た。

なんなんだ、二人して。


…一昨日の光流といい、あゆ姉といい。


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