僕らが大人になる理由
昼食のリゾットを、ようやく一口飲み込んだその時、内山さんが控えめにノックをして部屋に入ってきた。
「…紺野さんという男性からお預かりいたしました」
「え……」
「もう今日で、来るのは最後にすると、仰っていました」
「そう…なの…」
「…では、失礼いたしました」
それだけ伝えて、内山さんは心配そうに部屋を後にした。
内山さんから受け取ったのは、四角い箱だった。
あたしは、紺君からの贈り物と、もう来ないという事実のふたつに動揺していた。
深い青の四角い箱。
あたしはそれを膝の上に置いて、暫く見つめた。
何が、入っているんだろう。
紺君はどんな想いで、家まで来てくれたのだろう。
…あたしは、箱のふたをそっと開けた。
「オルゴール…?」
中には、宝箱の形をした手のひらサイズの小さなオルゴールが入っていた。
そして、そのオルゴールの中には、小さく折られた手紙が入ってた。
あたしは、ゆっくりとオルゴールのゼンマイをまわした。
キリリ、と4回ほどまわして、指を離した。
「あ…」
優しく流れてきたのは、“真冬の唄”だった。
ピンが、金属板を押し上げながらゆっくりと回転し、優しくメロディーが紡がれていく。
あたしの、名前の由来の唄。
あたしの、心の支えだった唄。
「どうして…」
…あたしは、口を片手で覆った。
それから、中に入っていた手紙を、ゆっくり開いた。
そこには、細い字で、ひとことだけ、