僕らが大人になる理由
「店長…紺君最近欲しがってるものとかないですか…?」
「紺ちゃんは何も欲さないからね~」
「じゃあ好きなミュージシャンとか」
「聞いたことないね~」
「趣味とか」
「料理と昼寝かな~」
「夢中になってるものとか」
「あ、そういえば最近探してるホラー映画あるって言ってたよ!」
「えっ!?」
「なんでも昔に観たホラー映画がもう一度観たいんだけど、タイトルが思い出せないらしくてね~」
ほ、ホラー…映画…?
ホラー映画のCMでさえまともにみれないビビりなあたしが、ホラー映画探しだと…?
無理無理無理。そんなの絶対無理。
小学1年生以来一切そういった類のものに触れていないあたしが、何本もホラー映画を観てたった一本を探し出すなんて…。
「紺君があんなこと言うなんて、よっぽど好きな映画なんだろうね~」
「………………」
「…え、真冬ちゃんもしかしてホラー系苦手…」
「特徴。教えてください。その映画の」
紺君曰く、大雨の日、1つの指輪を拾ったことをきっかけに、次々と奇怪な現象に巻き込まれていくストーリー、だそうだ。
最終的に主人公はマンションの中で突然死をむかえ、そこで映画は終わるという。
指輪をテーマにしたホラー映画。
それだけを頼りに、あたしはレンタルビデオショップに来ていた。
パッケージを見ただけで震えているあたしは、絶対にこんなコーナーに居ちゃいけない人だろう。
「もうやだ…絶対無理…」
ネットで検索を試みたものの、当然それだけの条件では見つからない。
あたしは、半分目を開けた状態でストーリー紹介文を読み、“それっぽいもの”をひたすらかごに入れていた。
そしてもう一本のDVDをとろうとしたその時、手がぶつかってしまった。