僕らが大人になる理由
「あ、ごめんなさい、どうぞ」
「あっ、いや、そんな」
同じDVDをとろうとしたのは、すらっと身長が高くて、お人形さんみたいな顔の女子高生だった。
センター分けのストレートロングの茶髪に、薄いピンクのYシャツと、赤チェックのスカート。
今は夜の7時だから、ちょうど学校帰りにここに寄ったのだろう。
数か月前まではあたしも女子高性だったのに、すでに制服を着こなせている彼女が羨ましいのはなぜだろう。
確かこの制服はS女子高の制服だ。
偏差値は県内トップの女子高だったような気がする。
あまりの美しさにぼうっとしてしまっていると、彼女は困ったように笑ってから控えめに話し出した。
「あの、いいですよ。これ。わたしちょっと見たかっただけなんで」
「あっ、あたしもです! それにホラー苦手ですし、大丈夫です!」
「ホラー苦手なのに借りようとしてたんですか…?」
「あっ、ちょっと探し物してて…」
「奇遇ですね。あたしもです」
彼女はにこっと笑って、ケータイのメモ画面を開いた。
「大雨の日、1つの指輪を拾ったことをきっかけに、次々と奇怪な現象に巻き込まれていくストーリーなんですけど…」
「えっ、あたしもその映画探してます!」
「え……」
彼女が言った映画とあたしが探している映画はたぶん同じだ。
こんな偶然ってあるだろうか。
それとも今その映画が流行っているのだろうか。
お互いビックリしたまま見つめあっていると、彼女がゆっくり口を開いた。
「どういう方から…頼まれたんですか?」
「頼まれたっていうか、店長…あ、いや、人づてに聞いただけなんですけど…」
「そうですか。…あ、あと、ごめんなさい。やっぱりこのDVD借りてもいいですか? どうしても見たくなっちゃって」
「あっ、全然いいですよっ」
「ありがとうございます。じゃあ」