僕らが大人になる理由
「…真冬。こっち見て下さい」
「嫌です。今回は上司命令も聞きません」
「…本当はホラー映画苦手なんじゃないですか?」
「そんなこ…ぎゃああああああ」
「あ、やっと顔見えました」
映画に脅えた瞬間、真冬が勢いよく画面から顔をそらした。
勢いがあり過ぎて首を痛めたのか、毛布の中で両手で首をさすっていた。
俺は、毛布の上から首筋をあたりを包み込んで、真冬をじっと見つめた。
「どうでもよくないです。…どうでもよかったら、今、こんな風に仲直りしようと頑張ったりしません」
「…仲直り…しようとしてるんですか?」
「…そう見えませんか?」
「ちゃんと口で言ってください」
「結構生意気言うようになりましたね」
「いひゃひゃひゃ。ごめんなひゃい調子のりまひたごめんなひゃい」
真冬の頬を抓ると、彼女はすぐに謝った。
俺は、真冬を覆っていた毛布をそっとはずして、今度は直接首筋に触れた。
「っ」
右手の甲で触れると、俺の手が冷たかったのか、真冬は一瞬表情を強張らせた。
「どこが痛いですか?」
「えっ、や」
「ここですか?」
「こ、紺くっ…」
「言わないとわかんない」