僕らが大人になる理由
第2章
芽吹き
俺の名前は吉良光流。
どっかのロボットがキラキラヒカルなんて呼んだせいで、自分の名前が少し嫌いになった時期もあった。
いっそその名の通り星になってしまいたかった。
そんなこともあったけど、俺はなんだかんだあのロボットのもとで働いてもう1年以上が経つ。
正直、この俺がこんなにバイトが続くとは思っていなかった。
欲しいものがあれば女が買ってくれたし、昔から“先輩”という類の人に嫌われるたちだった俺は(もちろん男限定)、誰かに指示されるなんてまっぴらだった。
けれど、紺ちゃんは、そんな今まで通りの“先輩”とは違った。
正直最初は舐めてた。
年下だし、中卒だし、無愛想で、淡々としていて、ただの人間嫌い気取りかと思ってた。
けど、それは違った。
人一倍人の感情に敏感で、誰かが傷ついていることにちゃんと気づける人間。
仕事だって完璧にできて、人の悪口を絶対に言わない。
真冬が、彼を好きになった理由なら、なん個だってあげられるんだ。
紺ちゃんは、そういう人間だ。
「お前さ、俺のどこが好きなの?」
「え」
朝の5時。
情事後、ベッドの中で、たまにする質問。
女は決まって一瞬当惑し、“顔”以外の言葉を探す。
「優しい所とかー、ノリ良い所とかー、あと、遊んでんのに頭良い所とかー」
「顔も良い所とか?」
「やだー、まあ、そうだけどー、全部好きだよ?」
「ご褒美にチューしてあげよっか?」
「えっ」
「はい、チュー」
体は抱いてもキスは好きな人としかしません。
なんてマンガみたいなプライドありません。
チューなんて誰とだってできます。
愛されてるっててっとり早く分かるし、盛り上がるか盛り上がらないかも、そこから全てが始まると思うから。