僕らが大人になる理由
ゴンっと乱暴な音を立ててグラスを置いた真冬。
一度ホスト経験のある俺からすると、とんでもない置き方だった。
もちろんその態度にムッとした俺は、真冬の腕を掴んだ。
幸い今は一番店が空いている時間だった。
「お前何その態度? 怒るよ?」
「だって」
「ん?」
「ふ、不潔…!」
「は!?」
真冬は『不潔』とだけ言い放ってキッチンに戻った。
もちろん俺は困惑したまま固まっていた。
不潔って、面と向かって初めて言われた。
もしかして、昨日寝た女が休憩真冬と被ったとか…? そんで昨日のありとある話をされて真冬がショック受けたとか…?
うわ、何それ。ありえすぎるんですけど。
「その通りですよ」
「うおっ」
「はい、三食丼定食…」
「まだ頼んでない頼んでない頼んでない」
「ごちゃごちゃうっさいのよこのケダモノ…」
えええええ。
何この人。超怖いんですけど。
突如頼んでない三食丼を持ってあゆ姉が現れた。
あゆ姉の機嫌も真冬同様最高に悪いことがひしひしと伝わってきた。
「さっきの休憩…どっかの最低下種野郎と寝たと騒いでいる下種女達と被ってしまったんです…」
「う、わー、どんなこと話してたー?」
「主にどうやってピーしたとか意外と強引なピーだったとか、でも最後は優しくピーでピーでピーだったとかとにかく下っ種いこと下種いこと…」
「ハハハハハハハハ」
「あなたの私生活には1ミリも関与したくないけれど、今後一切バイト先にまで下種い私情を持ち込まないでくださいますか?」
「は、はい…」