僕らが大人になる理由

それ、お前が言える台詞?

もっとちゃんよく見るって…、何を?

俺だって真冬が嫌いなわけじゃないし、むしろ結構気に入ってるし、俺にしては可愛がってると思うんだけど。

ぽかんとしたまま突っ立ってると、ぽこっと頭を叩かれた。


「とにかく、私情を仕事場にまで持ち込まないでください」

「…はーい」

「あとでちゃんと仲直りしてくださいね」

「紺ちゃんだってつい最近まで真冬と喧嘩してたくせに」

「うるさいです。名札『キラキラ☆ヒカル』にしときましょうか?」

「てめ、またそのあだ名を…! このロボット人間! 泣きぼくろ!」

「泣きぼくろって…」


なんだよ、みんなして俺をケダモノ扱いしやがって!

まあその通りだけどな!

俺はわさび丼定食に850円も払って、店をあとにした。

あーもう、最悪。

わりと最近居心地良かったんだけどな、あのバイト先。もう潮時かな。


そう、とぼとぼと歩道を歩いていると、突如腕を引っ張られた。

もしかして今日デートすっぽかした相手?

そう思い恐る恐る振り返ると、そこには息を切らした真冬がいた。

俺を追いかけてきたのだろうか。


「なんだよお前、食い逃げなんてしてねーぞ」

「あ、いや、そういうわけじゃ」

「じゃあなんだよ」

「なんか、紺君と不穏な感じになってたから…」

「あー、大丈夫大丈夫、紺ちゃんらびゅ愛してるー超仲良しー」

「…………ならいいんですけど」

「…お前さあ、本当紺ちゃんのこと好きだよな」

「え!?」

「いいよな、紺は」
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