僕らが大人になる理由
「仕方ないなあ、仲良くしてあげてもいいけど?」
「…それ、何の台詞ですか?」
「真冬の心情」
「…勝手にアテレコしないでください」
「あれ、外れてた?」
「………」
「当たってるっしょ? 真冬」
「……ふんだ」
「ハハッ、お前相当かわいーな!」
「ぎゃあああああだからすぐ抱き着くのやめてくださいいいい」
………俺のどこが好きなの?
あの質問は、多分当分誰にもしないだろう。
この先、もしかしてものすごく寂しいときがあったら、聞いちゃうかもしんないけど、もし聞くのだとしたら、真冬のような人が良い。
きっと彼女なら、「なんだそれ、寂しいのか」、って、笑い飛ばしてくれる気がするから。
「ハハハ、お前ほんとちっちぇーな」
「あーあ、これが紺君だったらいいのに…」
「っ、わ、悪かったな、俺で!」
「はーあ…」
「溜息つくな!」
その時、俺は怒りながら、
紺ちゃんの名前が真冬の口から出てきたとき、なぜかものすごく胸が痛かったことに気付いてしまっていた。
不幸なことに、俺は、他人の気持ちに鈍感な分、自分の気持ちにはすごく敏感で、すぐに原因を突き止めることができる。
その原因を数秒で突き止めてしまったとき、バッと真冬から腕を離した。
「え、ちょ、ないないないない」
待ってくれ。
これはない。
「光流君……?」
「い、いくらなんでもそれは駄目だって…」